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子供のころ、母のお針箱が宝筐に思えましたね。
色んな端切れに糸巻に貝殻のボタン、そこに混ざって古錢が入っているのが何とも気になって、そこから現れる品々にドキドキしていたものだ。
長じて後も貨幣の蒐集を楽しんでいるが、あのときめきを誰かに伝えたいのだがその機会は意外に少なく、この世界を活字として、画像として知っていただく橋渡しができないものだろうか---------、
そんな思いに駆られている時、青倉氏に巡り合った。
以降、己が世界の開陳に随分とお世話になり、可成り無理な註文をしたはずだが、氏の持つ経験、技能から仕上がって世に送り出した書籍の数々は泉友各位の書架を飾り、全国の貨幣に興趣を抱く方々の手元で『宝筐』を開くように生かされているはずだ。
今ここにその全てを紹介はできないが、一、二を示して、依頼者と作業者との息が通ずれば斯様なものが出来上がるところを観て欲しい。
自己の蒐集品を拓本にて整理したものだが、古代裂の表紙、用紙には名塩紙を用いて康熈綴じで装丁し、それを納める帙も独創的な意匠となっている。
『城州古札見聞録』
山城國(現、京都府南部域)で往時通用していた楮幣(紙幣)を網羅したカラー版の大冊である。本の内容も然ることながら秀逸な意匠が耳目を集めたものか本冊は第16回日本自費出版文化大賞を得たが、青倉氏の助言があればこそ成し得たものである。
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